Peace & Pieces
そらの珊瑚
【食いしん坊なのです】
赤ちゃんのほっぺは
つきたての餅のようだ
誰も見ていなかったら
つい食べたくなってしまうほどの
◇
【みみず】
おまえをみつけると
つい
「ぎゃっ」と
叫んでしまうけれど
嫌いなわけじゃないんだよ
あれは
その
ええと
私の不徳のいたすところで
本当はとっても
ウェルカム! だよ
◇
【カップル】
夕焼けの時間は
とうに過ぎて
山の端が
黒いシルエットになる
薄暮れてゆく空に
二羽の鳥が
たわむれながら
帰っていく
幸せな暗闇に
◇
【わたしのおうち】
紙で出来た家に住んでいます
ふうっと
吹かれて
時々空へ漂ってます
住所不定です
あしからず
◇
【百葉箱】
ゆきちゃんは
カエルのすみかだっていう
アマガエル国の
由緒正しき
お姫様ゆえ
百枚の葉っぱを
ふとんにしていらっしゃる とか
そろそろ
冬眠から
お目覚めですか
◇
【実家】
何年たっても
実家の玄関をあけると
そこんちの子供になったように
私は
「ただいま」という
もう とうに
よそんちの人だというのに
いつか
実家が空家になっても
「ただいま」というのかな
「おかえり」が聞こえなくなっても
◇
【ボタン】
よくぞ
ご無事で、と
あなたの背広の
取れかかったボタンを
ねぎらう
あたかも戦から
戻った家人を
三つ指ついて(ついたことはないけれど)
出迎える女房のようにして
かいがいしく(たまには)
ボタンをかがる