【 母ちゃんの唄 】
泡沫恋歌
母ちゃんと旅に出る
鞄に歯ブラシ、着替え、切符と
最後にわくわくを詰めて チャックを閉める
朝一番のバスに乗り込んだ
母ちゃんと座席に並んですわる
乗り物酔いの薬あるよ
切符は持ったかい?
酢昆布食べる?
いちいち、うるさいけど……
機嫌の良い母ちゃんは
古い唄を口ずさんでいる
わたしの知らない
ずっとずっと昔の唄だね
呼吸器が止まった 心臓が止まった!
瞑目して動かない 母ちゃんが……
お医者さまが時計を見て時間を告げた
母ちゃんの時間が止まった
わたしは凝視したまんま……
昔、一緒に行った町を歩く
母ちゃんの思い出を辿りながら
心の中の母ちゃんとおしゃべりしながら
この旅から帰ったら
きっと わたし元気になるから……
母ちゃん もう心配しないで