午後五時の御茶ノ水駅から
……とある蛙

十二月の夕暮れは突然やってきて
時間の無い坂道を上って行く
左手に灰色のニコライ堂が聳え
覆い被さりながら

聖橋の先には聖堂の黒い森
神田川もJRも跨ぐ聖橋
暗いトーンの夕暮れから

お茶の水の街は
人が行き交う暮れの活気と
視覚的には実在感がありながら、
置いてけぼりの自分の像
次第に像が変容する
街の喧噪からも
次第次第に置かれてゆく

その先に見えるものは
日常と非日常の狭間にある
暗黒か
視界が点になる視野狭窄
足下がふらつき
そのまま丸善の扉に吸い込まれ

細い円錐の人々が
平積みの書籍に群がり
円錐の先から視線を書籍に落とす
非日常の光が迸っているが無音

マガジンラックに置かれた
雑誌にも群がる円錐
円錐の先の視線は日常の光を追っている。

駅前の通は
道幅一杯にバスが轟音をたて
とても短い横断歩道を切り裂く

ここは神田の山の上
ヒルトップHは向こうの山に
神田山の名残が盛り上がる
穿たれた神田川が渓谷となり
銘渓 御茶ノ水 となる


自由詩 午後五時の御茶ノ水駅から Copyright ……とある蛙 2012-03-01 17:10:35
notebook Home 戻る