昭和の悲劇 2
浩一

慟哭はどこから来たか?
慟哭は胃の腑の裏のあたり
身体の奥の奥の方から
何度も何度もやって来て
何度も横隔膜を突き上げた
決して心なんかじゃなかった

慟哭はなにゆえ来たか?
それは父の遺骸を荼毘にふそうと
棺を焼却炉に入れようとした時
慟哭は不意におとずれた
決して悲しみなんかじゃなかった

私はおえつと涙を堪えきれずに
誰かに支えられて
辛うじてやっと立っていた
父の遺影を抱きしめて
ともすれば崩おれそうになりながら

私は父を憎んでいた?
そう 確かに私は父を憎んでいた

だが私は父を愛していた
そう 確かに私は父を愛していた

憎み そして 愛していた


自由詩 昭和の悲劇 2 Copyright 浩一 2012-02-29 11:17:48
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