まぼろし
乱太郎


忘れ去っていく言葉よりも
あなたのいのちの清さにふれて瞼が閉じる
いつまでも文字にならない
あなたの悲しげで透明な息づかい
反復するあなたの鼓動が
休もうとしている風を揺るがす

あなたはいままでどこに
問いかける言葉ひとつひとつが
まだらに染まる紅葉となって落ちていった
見上げる空では雲が走り去る

突然の携帯電話の着信音
わたしはここです
あなたのいたずらな声が聴こえる
ここにいて
そして遥か向こうに
遠くにあって
すぐそばにいるあなた

これからどこに
まぼろしのあなたの影を探す


自由詩 まぼろし Copyright 乱太郎 2012-02-28 16:28:05
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