黒い海辺
本木はじめ



陰影を帯びた岩石の暗い夕刻
雨の降りしきる海辺で
傘をさして立っている
巨大な夜の蛇のようにうねる
真っ黒な海の彼方へと
泳いでゆくきみ
疲れたら、帰っておいで
いつでも どんなときでも
中途半端に燃え尽きる 煙草を捨てる
疲れたら、帰っておいで
僕は闇のように きみを愛撫するだろう
無数の黒い線が視界を埋め尽くしてゆく
きみはまばたきのように
瞬間の連続体として
ぼくを置いてゆく
その速さ、黒い速度に追いつけないまま
何度も裏切り 幾度となく捨ててきた季節
もうこの目では見ることのできない世界
座礁した箱舟のように朽ちてゆく
ここは世界の果て
きみは帰ってこない
微笑みながら延々と
両目から牛乳を流し続ける
ここは世界の果て
むしろ 帰ってこないのは世界ではなく
僕なのだろう





自由詩 黒い海辺 Copyright 本木はじめ 2004-12-01 02:50:06
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