丹波哲郎物語
花形新次

死者の世界をも包括しないと
現代に物語が成立することはない
といったのは誰だっけか

死者の世界とは
異形の世界であり
異能の世界でもある

リアルが
揺るぎないものとして
そこに確かに存在すると
証明したところで
人は、決して救われることはない

それでも
ただひたすら救われない物語を
紡ぎたいのであれば
それはそれで構わないだろう
手っ取り早いのは
一年中僕の暮らしに付き合ってみればいい
とびきり救われない物語が手に入るはずだよ

しかし、もし君が
消え入りそうな声で
まだ夢の続きを語ろうとするのであれば
それは死者の世界を
異形の世界を
異能の世界を
語る声でなければならない

君は耳を澄ます
iphoneでもipodでもない
死者の世界に
そこに住む人たちの声に

君はその声を真似てみるだけでいい
それは君の声のようで
君の声でない
君の声・・・・
彼岸から流れ漂う
声なき声


自由詩 丹波哲郎物語 Copyright 花形新次 2012-02-20 21:39:19
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