彼女は笑ってた
永乃ゆち

不埒な恋もそのままに
激しく呼吸を乱してる

私の左のくすり指には
約束が強く巻き付いて
それがきつく縛り付け
指先から腐り初めてる

純粋を誓ったのも今昔
最終章が扉を開くので
そっと覗いて見たなら
あそこに居るのは誰?

年老いて病に臥せても
忘れられない恋がある

腐ったくすり指をいま
食いちぎって棄てよう

あなたの顔が見たいの
あなたの息で熱くして

純潔はいつも守られず
悪魔が天使に跨がった

そんな構図はいかが?

不埒な恋もそのままに
飛び出していく衝動に
私は決して逆らえない

つまりは単純に言えば
どんな崇高な理由でも
やってることは接吻と
性行為でしかない事実

腰を振って髪を乱して
どこまでも遠く叫んで

人類最初の殺人者なら
カインであったけれど
人類最初の不倫者には
この私この私を掲げる

罪深き二人は世の中を
ひっそりと欺いている

救われたくはないのよ
罰なら受ける覚悟の上

地獄に招待されたいの
もちろんあの人と一緒




約束のくすり指
ポトリと落ちて
体中腐り初める
騎乗位のままで
ミイラになった
彼女は笑ってた


自由詩 彼女は笑ってた Copyright 永乃ゆち 2012-02-12 13:45:34
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