雨を切る
理来

雨を切る
水面のふたえの眼差しを
かたちとどめるまで震わせる
水上に口寄せる雲のとうげ
向こうは見えず雨惑い
みなもとに降る縦糸の舟が
あまさず小道を払いおとし
南の淵から流れる北へ
イタチの相貌を走らせる

両腕を広げると
落下する、わたしも落下する
雨を切る
わたしも切りつけられる
いたみをつなぐ気配とわたし
手を取り合って橋渡し
この不親切な舞踏にも慣れてきた
わずかずつ、聞こえるか
あふれて全体を伝うもの、揺り起こすもの

訪ね歩いたのは
背後から投げかけられたすべて
わたしに追いつき、それは一致し
肩幅の膜から浸透した
わずかずつ、聞こえるか、意志は目を覚ましているか
わたしはいま微笑みかけている
道の途中にあるこの冷たさも掌のめぐりにそって重なる


自由詩 雨を切る Copyright 理来 2012-02-04 21:44:53
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