受話器
草野春心



  橋の下の叢に
  ひっそりと落ちていた
  真珠色の受話器と
  捩れてしまった一本のコード
  その先は川に入っていて
  その更に先は
  わからない
  暮れ時、水面には
  ふたつめの夕日が燃え
  ふたつめの僕が揺らめき
  どこかで
  だれかが
  なにかを喪っていた





自由詩 受話器 Copyright 草野春心 2012-02-03 09:41:35
notebook Home 戻る