小さな旅立ち
花形新次

君が自力通学を始めた
家のドアを開けるところから
養護学校の門をくぐるまで
たった独りで
独りっきりで

君はもう17歳なんだし
大したことはないじゃないかと
他の人は思うだろうけれど
ここまで来るのは大変だったんだよね

ママはずっと前から
「この子は絶対に大丈夫、絶対に独りでできる」って
確信していたんだ
でも男親の僕のほうがビビリなもんだから
なかなかそれを許さなくて

それに、去年はあんなことがあったしね・・・・
君が異変に気付かないで
ポツンと取り残されて、立ち尽くす姿を想像すると
それだけで胸が張り裂けそうになったんだ

だから学校の行き帰り
片道、電車とバスを乗り継いで1時間
すべて合わせると4時間
ママには無理してもらってた

これからのことを考えると
いつまでもママが付き添うってわけにもいかないから
先生の強い勧めもあって
こうすることに決めたんだよね

初めて君が一人で帰ってきて
満面の笑顔で
「ただいま!」と言ったとき
君の瞳が自信でキラキラ輝いていたと
声を詰まらせながら
ママが話すのを聞いて
これで良かったんだと納得したんだ

自分の子供が手元から離れていく
親の心境なんて
味わえないと思っていたから
ちょっぴり悲しいけれど
でも、やっぱり嬉しいや


自由詩 小さな旅立ち Copyright 花形新次 2012-02-02 12:03:56
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