うずうず
森未


いつごろかなあ
泥遊びをしなくなったの
虫だっていつのまにか触れなくなったし

雨の日に
傘さすのやめて
長ぐつのなかびしょびしょになっても
きにならない
友だちと歩道の横にできた小川をのぼって帰る
ただいま!と
ぬれたランドセルを
タオルで拭いてもらう
怒った母の姿も
懐かしいね
くしゅんとくしゃみすると
「ばか」
としかられて
やっぱり熱を出した
そうすると母は少しだけ優しくなったりする
(もちろんそのときだけだ)


「いけません」
なんてことが口癖にいつのまにかなって
自分だって通ったはずの時間なのに
どうしてか
大人になるっていうのは
こういうことか
そういうもんだ
とも思うし
悲しいもんだ
とも思うし。

あのころ見えていた
世界や明日は
もう少しきらきらしていたはずなのに
どうしてか
大人になるっていうのは
こういうことか
そういうもんだ
とも思うし
ひどく悲しい
悲しいよ

だからすこしでも
覚えていたいなあ
どろどろの土の感触
ぬるい雨の小川の温度
もうきっと触れられないんだけど
覚えていたいなあと思うよ
ときどき
うずうずする
あのかんじ
それがきっと
このかんじ



自由詩 うずうず Copyright 森未 2012-01-29 19:06:49
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