がりがり
Ohatu


 がりがりに痩せたはかない猫が、その鋭い目で、僕を狙っている。

 僕は、食べられたくて食べられたくて、その指を出した。

 そんなにはおいしくないさ、だけど、ほら

 猫は、指をかじったが、もう、くわえるほどの力しかない。

 ミルクなら飲めるかも知れない、だけど今は我慢、もうすぐ死ねる。

 抱いてやろうかと思ったが、そんなことに意味があるのか、漠然と。

 猫はよろよろと、どこかに向って、ああ、後ろ脚は変に曲がって。

 僕は、そこに残って、絶対に来ない終わりを待つ。遺言だらけの本棚が、

 さかさまに点にのぼり、雲を作っている。

 猫は強い、人はその半分も、生きてなんかいないのさ。

 ああ、もう、陽が落ちる。結局、変わらなかった、今も、墜落する飛行船のなか。





自由詩 がりがり Copyright Ohatu 2012-01-28 11:50:22
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