夕辺の愉しみ
たにい

一日の労働を終えて勤務先ビルの最上階休憩室に上がり 西を向いて座る

取り巻く雲の縁を薔薇色に染めながらオレンジ色の太陽が落ちてゆく 
中景には超高層ビル群の黒々としたシルエット
空いっぱいにシンフォニーが響き渡る
それを僕は暖房の効いた観客席で観ている
なんという豪華な劇だろう

英雄の没落劇を観た後は分厚いコートを纏って街に出る
青黒く褪色し始めた空に いくひらかの白い雲が流れて行く
楽団はしめやかなレクイエムを演奏し始めた
衿を立て足早に家路を急ぐ観客の群に混じって僕も駅に向かった


自由詩 夕辺の愉しみ Copyright たにい 2012-01-27 23:36:24
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