虚空へ
はなびーる

お父さんとお母さんのことを
この人たちはいったい何者で
どうして私といっしょに家にいるのだろう、と
思ったことがありますか?

もし、そう思ったとしても
決してそれをお父さんとお母さんの前で
口にしてはなりません

何故なら、ひとたび
「あなたがたは誰?」
と云おうものなら

お父さんとお母さん(だった人)は
とたんに顔がのっぺらぼうになって
ぶ厚い粘土が
白と灰色の縞模様になったものが
お面のように張り付いて

びっくりしたあなたが
その張り付いた粘土を

   剥がしても
    剥がしても
     剥がしても
      剥がしても
       剥がしても

どんなに剥がしても
もとの顔は現れない

そのうちに
お父さんとお母さんだった人は

        ケケケケケ……

 ヒヒヒヒヒ……

と笑いながら
あなたの名前を呼ぶこともしないで

新聞も飲みかけの紅茶も
ベランダの布団も可愛い黒犬の散歩も
何もかもほっぽらかしてしまって

てんでに
虚空へと
飛び去って
しまうのですから!



                     (旧作)



自由詩 虚空へ Copyright はなびーる 2012-01-25 18:09:09
notebook Home 戻る