金糸雀
そらの珊瑚

愛玩物ではない
友だちでもない
生贄なのだ その金糸雀は

愛くるしい黒い瞳に
健気にも
青い空を映し
そのさえずりは
未来の鈴の音のような かろやかさ
あばら屋に
不似合いな
微塵の憂いもない、スタッカート

炭鉱に
人間とともに
連れて行かれた
その金糸雀は 生贄なのだ
毒があることを
自らの死をもって
人間に教えるための

今日は
生き延びたが
明日はどうだろうか

生贄は
課せられた運命を
知っているのか 知らないのか
それは私の余計な感傷で
今夜も 
金糸雀は唄っている
私に再会したことを
喜ぶかのように
とても機嫌良く

愛玩物でもない
友達でもない
遅かれ早かれ
失うことになるであろう
生贄なのだ その金糸雀は

風切羽をむしりとられた 私の希望でもあるのだ



自由詩 金糸雀 Copyright そらの珊瑚 2012-01-25 09:34:06
notebook Home 戻る