メランコリア
faik

形あるものいつかは壊れる
じゃあ少しずつ変化させましょ
丸いものには角を足し
四角いものにはやすりをかけて
それで続いていくのなら
素敵なことじゃあありませんか

行かないで、希望の贋作
張ったら剥がせばいいじゃない
最終的に厚くなるのだから
ずっと癒えずに爛れておいで

安っぽいぬるま湯
しめやかに染めた浴室を
難破した宇宙船に見立て
カビっぽい無重力をたゆたう
ふんぞりかえった私の上で
換気扇がそれらしい音を上げる
それはそれは大袈裟な
ちゃちなSF映画みたいな音を

さようなら、薄羽蜉蝣
さようなら、赤い向日葵
さようなら、昔の昔の風見鶏
私は今夜、聖なる邪心に埋もれます
もう、そう決めたのですから

そも、幸せってなんでしょうね
そも、そんなことを風呂場でぬくぬく
考えてる時点で十分幸せじゃないですか
なにか別の形があるのかしら
丸いの?四角いの?やらかいの?
お前の幸福は ロールシャッハか

食えたもんじゃない
まるでとろみもうまみもない
こいつはあんまりシャバ過ぎる
いいえこれはスープカレーよ
一晩寝かせた成果なの
ああ、そう思って食うと旨いかもね
案外食えるよ、こんなでも


幻覚は淫らにローブを纏い
妄想は豊かな蝋を滴らす
たらりたらり
あちちちち
そして現実
それは、現実?

それじゃああちらはどなた様?
現実味のあるリアルな夢想?
整合性のないレプリカの真理?

古池に張る薄氷は
太陽に刺されひび割れる
誰かが必死に練り上げた
感情論も水浸し
アイデンティティーもぐっずぐず
すべては無益な結果論

もっと情熱的になれよ
いいやもっと冷静になれよ
分かったような口を聞くな
退屈のくせに
退屈の分際で
お前は少々生意気だ
その上
いつまで待っても生煮えじゃないか


愛しているといえば、ほら
何かが救われるような、気がして?


けれども十把一絡げ
目と鼻塞いで飲み込めば
私の世界は存外に
愉快なもんでございます

ぱっさぱさでも
べっちゃべちゃでも
味はしっかり、カレーパンなのですから


自由詩 メランコリア Copyright faik 2012-01-24 16:39:07
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