寒い日
草野春心



  寒い日は
  煙草を一本吸うことも
  悲しみに沈むことも
  完璧すぎるほど完璧なのです



  だから、なるべく
  傷を負わないように
  躓いたりしないように
  歩いてゆくのです
  ポケットに、乾いた手を
  ニット帽には、足りない頭を
  胸の内には、思い出を
  ぶっきらぼうに突っ込んで
  けして
  手離さないよう
  大事に歩いてゆくのです



  寒い日は
  透明な鏡のなかに
  放り込まれるようなものです
  悲しむことも
  誰かを愛し
  些細な傷を負うことも
  永遠に繰りかえされ
  寒い日には
  それもまた、
  微笑みながら
  頷けることに思えるのです





自由詩 寒い日 Copyright 草野春心 2012-01-23 18:38:04
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