こころの光(1)
吉岡ペペロ

砂浜にはガムが落ちていた

それを鵜飼順平は拾いポケットに入れた

砂にまみれて湿ったガムが太ももをころころとくすぐった

鵜飼順平は波を見つめた

今日の波はいい波ではなかった

穏やか過ぎた

服を脱ぎボードを抱えて海に入ってゆく

足のつかなくなる辺りでパドリングに切り替える

そしてしばらく浮かんだ

太陽がきらめいている

ボードをあごにくっつけて沖を見つめた

耳に波があたる

波の音がしている

鵜飼順平は両耳をわざと波につけた

無音だ

貝に耳をつけたときする音だけが聞こえる

いい波が来なかった

仕方なく妥協してあの波に乗ろうと決めたときだった

飛行機の音がしたような気がした

機影をさがしたが見当たらなかった

ハワイ島にも戦艦が数隻停泊しておりそれが演習でもしているのだろう

波が来た

順平は急いでパドリングを開始した






自由詩 こころの光(1) Copyright 吉岡ペペロ 2012-01-22 15:55:37
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