お大事に
HAL

想い出って佳いものだね
そのなかに住むひとたちは
みんな若いままだ 誰も歳をとらない

馬鹿な想い出だってあるけどね
でも いまなら笑って想い出せる

それぞれにひとはいったい
どのくらいの想い出をもっているんだろう
その想い出で心は満タンなんだろうか

でも 想い出したくない想い出もあるだろうし
誰にも話したくない想い出もあるんだろうね
きみにもぼくにもそんな想い出があるようにね

でも そんな想い出は頭の中の塵箱に
捨ててしまえば佳いんだよ
想い出したくない想い出なんて
もっていたって幸せにはなれない

少しずつ歳を重ねていってさ
少しずつ嫌な想い出を捨てていく
そんな歳のとりかたができると
歳を重ねることがそれほど辛くなくなる

だからね ぼくは想うんだ
きっと非難されるだろうし
罵倒もされることは分かっているけど

この世の中でいちばん幸せに年齢を重ねていくのは
アルツハイマーに罹ったひとだと想うんだ

酷い考え方だろう
心ない人間が言う言葉だろう
きっと周りのひとには多大な迷惑をかけると想うけどね

でも いま医師にぼくが何を知らされたと想う
ぼくは進行の早い若年性アルツハイマーだってさ

きみ 大丈夫かい 顔色が真っ青だよ
きみの番だろ 早く診て貰った方がいいよ

あれ 付き添ってくれた友だちは何処に行ったんだろう
ここで待ってると言ったのに

じゃあ お大事にね
ぼくは友だちを捜してもう帰るから


自由詩 お大事に Copyright HAL 2012-01-21 12:23:49
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