バラ色
あおば

 
刹那の色が大地を紅に染める
遙かな夕陽は影を引きずり
生きる者も死者のように佇んで
木下の草亀も石のふりして
影の谷間で木の実を拾う

120円で電車に乗るためには
何十個木の実を拾えばよいのか
考えても分からない
運べるだけ運び無人の交換所に向かう
あるだけを首に下げた筒に入れ
薄暗い道をチャリンチャリンと駅へ行く
皆に頷いてもらえるだけの金額があるのか
ないのか
誰も知らない
知ろうともしない

それ後のことも分からない

ぼんやり照らす月灯り
途絶えたガソリン
岩のように道を塞ぐ自動車
みんな冷たくなっている

一筋の望みを託し
草亀の足跡を辿り
歴史に飢えた者たちが後を追う
水を湛えた池が干上がるのを見たくない
そんな気持が高まって
草亀の小さな頭にも真新しい鉢巻きが巻かれ
これから突撃する新兵のように身を震わして
誰かが合図をするのを待っている
薔薇の花が散るのはその後である 


自由詩 バラ色 Copyright あおば 2004-11-28 20:56:10
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