我が愛しき小娘(ガーリッシュ)
そらの珊瑚

ファスナーがいつも従順だと思ったら
それは思い込み もしくは 先入観みたいなもので
生地を喰うことがある
貞淑だった人妻が 
何を思ったか豹変し 
畏れをしらぬ 厄介なうえ 世にも面倒な 小娘になった

意気揚々と
噛み付いたまま
押しても引いても ままならず
どうしたものかと
生地は途方にくれはてる

それが本心であろうとなかろうと
思いつく限り
なだめる言葉をかけながら
タガがはずれたファスナーの
機嫌が戻るのを
待つしかない

 おそれいったか

とうとう事態は修復せずに
どうしようもなくなったが
壊れたファスナーの洋服を
捨てられずに とっておく
時々
ながめては こうつぶやくために

同志よ!
我が内なる小娘は死なず、と


自由詩 我が愛しき小娘(ガーリッシュ) Copyright そらの珊瑚 2012-01-20 08:33:56
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