ハミング爺さん
灰泥軽茶

フフフンノフン〜
ジャバジャバダバダ〜
ムチャ〜チャシソレ〜

ポケットの中から何やらハミングが聴こえてくる

携帯電話が通話中になっており

お爺さんらしき人がそれはたぶんお風呂に違いない

こもった場所でハミングする声が聴こえる

話しかけても何の音沙汰もなく

電話を切ることや電源を切ることもできず

私にだけ聴こえる音量でハミングは聴こえてくる

仕方がないからそのままポケットに入れると

ふとももがハミングでプルプルッと震え

わき腹あたりまで昇ってくすぐったい

オチャラケホイホイ〜
ハトムネノムナサワギ〜
チラミスルティラミスル〜

なんだか楽しさ弾けてお爺さんは抑揚をつけはじめている

ハミングは小さな気泡のように

背中からうなじまで産毛を震わせ

武者震いが武者震いが絶え間なく続き

つむじからハミングの気泡が出ていくようで

コポコポコポゥと耳奥で反響し

たまらなく心地良い

と、

「うるせぇ爺さん」

向こうで怒鳴り声が聞こえ

電話はツゥーツゥーと

空白を打ちはじめた







自由詩 ハミング爺さん Copyright 灰泥軽茶 2012-01-20 02:41:31
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