ハミング爺さん
灰泥軽茶
フフフンノフン〜
ジャバジャバダバダ〜
ムチャ〜チャシソレ〜
ポケットの中から何やらハミングが聴こえてくる
携帯電話が通話中になっており
お爺さんらしき人がそれはたぶんお風呂に違いない
こもった場所でハミングする声が聴こえる
話しかけても何の音沙汰もなく
電話を切ることや電源を切ることもできず
私にだけ聴こえる音量でハミングは聴こえてくる
仕方がないからそのままポケットに入れると
ふとももがハミングでプルプルッと震え
わき腹あたりまで昇ってくすぐったい
オチャラケホイホイ〜
ハトムネノムナサワギ〜
チラミスルティラミスル〜
なんだか楽しさ弾けてお爺さんは抑揚をつけはじめている
ハミングは小さな気泡のように
背中からうなじまで産毛を震わせ
武者震いが武者震いが絶え間なく続き
つむじからハミングの気泡が出ていくようで
コポコポコポゥと耳奥で反響し
たまらなく心地良い
と、
「うるせぇ爺さん」
向こうで怒鳴り声が聞こえ
電話はツゥーツゥーと
空白を打ちはじめた