謎の美の女
ヨルノテガム






 手とベッドがあり
 熱帯の尖った赤い花に口づける鳥の声は
 小さな吐息よ羽の揺らぎ

 *

 コタツに蜜柑に長い睫毛
 青い紺のセーターと花模様のスカート
 両膝を立てた素足に残る幼さに
 布一枚向こうへ花弁の陰は
 歩調を恒久に続かせる、季節。

 *

 地球のこと、全て知っている顔。
 もう半分顔は、「アナタ地球のこと
 全然知らないんじゃないの?
 教えてやろうかしら、」という顔おもて。
 右左の顔の目線はどうにも合わない
 女の視界に入るように「好きだ」を
 伝えることで今日という日の地点から
 数式の図形は観測し始めるのではないかしら、と地震。

 *

 足の爪は伸びっ放していてたまにしか切らないから
 だらしないなぁと思う 虫歯も治療痕だらけだし
 鼻毛もコンニチワと挨拶したがる
 痔は治まるだけでうれしくなるし フケだらけの頭、
 目も悪くなるばかり。いつかワタシは颯爽と脱皮して
 ツルリと生まれ変われるんじゃないかしら、と満月。

 *

 湧き水の茶をのむ
 溢れているのをのむ
 溢れずに留まるのをのむ吸う
 幻を音を立てて 掻き乱す
 点滅する星々の引力を
 女の乳房のちょうどあいだにひそむ
 一点のほくろに照らし合わせる
 女は揺れ動き力を伝える、髪は数式の図解をひも解き
 あらゆる残像を鼻腔と吐息と、のけぞらせる
 ワタシは宇宙を迷う闇を照らす光の源、太陽。
 惑星を畳の上に転がして
 物質の意志を五指でゆっくり掴み取ろうとした

 唇もなく 鼻もなく
 乳房も腕もなく
 へそへ繋がる穴陰が暗黒の通り道
 乱れた肉体と髪の指し示す有無の限りに、銀河――

 瞳を閉じて
 (まぼろしだろうか
 陰をいじりだして
 (まぼろしだろうか
 ワタシは女にも生まれてみたかったし
 (
 快楽との待ち合わせ?
 (
 こんにちは、まぼろしだろうか
















自由詩 謎の美の女 Copyright ヨルノテガム 2012-01-19 02:27:19
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