【 嘘と男と着信メール 】
泡沫恋歌

男が嘘をついた

嘘だと分かっていて
わたしは騙されたふりをする
嘘だと言ったら
瞬間に
嘘が本当の嘘になってしまうから
すべてを失いそうで
怖くて
わたしはそれを言えない

男には何度も騙されてきた

彼の言う
「愛してる」はすべて嘘だった
わたしの心の傷に
「愛してる」という言葉を
絆創膏みたいに
ペッタンペッタン貼り付ければ
愛されているような
錯覚に
わたしは陥った
剥がせば傷口から血が流れるから
とても剥がせない

愛なんか
永遠でもなく 至上ではなく
ただの気まぐれな風だった

携帯に着信メールが届く

ピカピカ点滅して
わたしの携帯が反応する
男のメールを開いてみたら
それは昨日の嘘を上書きしただけの
無意味な言葉ばかりだった
いつも削除のボタンを押そうとして
結局
消さずに取って置くのだ

嘘 嘘 嘘 すべて嘘なのに――

愛は
与えるものでもなく 
奪うものでもなく
ただ信じる心だけで繋がっている
実体のない 不確実なもの
わたしは
真実なんか知りたくない
知った瞬間に
孤独な自分を知ってしまうから
お人好しのままで嗤っていたい

だから
嘘ついてもいいんです
嘘には真実を隠す優しさがあるから

その優しさに縋って わたしは生きていける
――と、きっとそう思う



自由詩 【 嘘と男と着信メール 】 Copyright 泡沫恋歌 2012-01-17 09:00:32
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