草原色のクレヨン
灰泥軽茶

部屋で寝転がり
凹凸のある真白い壁紙をじぃっと眺めていたら
いてもたってもいられなくなり
クレヨン屋さんに走る

奥行きの広い店内には何百色ものクレヨンが
一色ずつ一本ずつ
天井まで透明な仕切りに入れられそびえている

ありったけの草原色のクレヨンを下さいと言い
わっしわっしと袋を握りしめ
スニーカーももう脱がずに
部屋に戻り床にクレヨンを広げ転がす

さあ真白い壁を草原色のクレヨンで
塗りつぶそ
力の限り塗りたくったら
窓を開けて

気持ちの良い心地の良い
風が吹くよ

塗りつぶされた草原色の壁に描かれた
ひとつひとつの線が一本ずつなびくよ

手に触れればくすぐったい
すぅっと生き物の匂いがするよ

さあでかけよう
草をかきわけかきわけ
柔らかい優しい草に撫でられ撫でられ
全身がほとばしる

あれぇ冷たい水の音がすると誘われていくと
さんさんと輝く泉で水浴びをする真白い象
裸になって一緒に水浴びをしていると
鼻から噴水
光にさらされた
一粒一粒の水滴が肌を打ち鳴らし
沐浴のごとく身体と精神は清められていく

よぅしよぅしと
綺麗な白い肌を撫でてやっていると
ざらざら無機質ごつごつコンクリート
それはいつのまにやら凹凸のある真白い壁紙
あぁつかのまの白昼夢

しかしながら
窓は開け放たれ
草原の匂いがすぅっと
爪の間には草原色のクレヨンの滓がびっしりと詰まっていた




自由詩 草原色のクレヨン Copyright 灰泥軽茶 2012-01-16 02:06:05
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