空葬
本木はじめ

立ち込める黒い雲の下で
ずっと穴を掘っている
解体されたぼくらの恋の死体を
埋める為
街は夜の鏡のように静かで
鳥たちはみな盲目の眠りのなか
指は、もはや僕の指ではない
きみと何年もの間ともに過ごした
僕の指もこの冷たい土、恋の死体と共に
時間と季節に奪われてゆく

僕は僕ではなくなるだろう
どちらかが片付けなければならない
外側の熱も
内側の熱も
僕のものではない
きみのものではない
美しくはない
指はもう冷たくもない
ふたりで飼っていた小鳥を
真夜中に埋めていたきみの姿がよぎる
この無機質な恋の死体に
もはや翼を探すことはできないが
いつの日だったか
あの春の青い空を
僕らも飛んでいたのだろうか
あの小鳥のように
あの小鳥のように




自由詩 空葬 Copyright 本木はじめ 2004-11-28 12:57:10
notebook Home 戻る