ノート(ふたり)
木立 悟
そこには居ないものの影が
たくさんの影に混じっている
やわらかい草と硬い草の境いめを
音はまぶしくかき分ける
紫に囲まれた桜色の道を
ふたりは手をつないで歩いている
うっすらと陽のかたちが飛んでいる
音がときおりぶつかっては鳴る
白と黒の土煙のなかで
白と黒にふりかえる耳
原をめぐる小さな歩み
冷たい朝を踏みしめる
青と白の鉱の道には
書き写された風がひろがる
透明とまだらが交互に倒れ
鉱と砂に染まっている
水彩の丘に花は流れて
傾く空の傾きになる
ふたりは流れない花をひとつ選んで
まぶしさの道を歩いてゆく
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