角砂糖
草野春心



  籐椅子に体を沈めて
  女が自分の手首を切っている
  カッターナイフで
  夢心地な眼で
  なにか、神聖な
  儀式の準備をするように
  女が自分の手首を切っている
  この部屋はひどく狭い
  窓は黙っている
  酸素は漂っている
  カーテンは震えている
  女が自分の手首を切っている
  角砂糖を舐めている
  思考の透明な塊を
  からから、
  からから、
  上半身の中で転がしている
  カーテンは漂っている
  窓は震えている
  酸素は黙っている
  女が自分の手首を切っている




自由詩 角砂糖 Copyright 草野春心 2012-01-12 17:32:54
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