かがり火が灯る冬の夜に
そらの珊瑚

かがり火が灯る冬の夜
どこかで
誰かが泣いています

寒々とした出窓に置かれた
ピエロのオルゲエル人形
1ミリたりとも動くことはありません
ネジを巻かれたのは
いつだったか
もう思い出せないくらい大昔

いい音色だったの
美しい旋律よ
もう一度
あの物語を唄ってあげたいけれど
背中のネジを巻いてくれる人は
もういなくなってしまった
一人では
ワンコーラスたりとも
唄えやしないわ

私は既に泣いている
笑いながら泣いている
頬の涙は乾いても消えはしない

螺旋の蕾を
ゆるゆると
ひらかせたのは誰でしょう
窓からのぞく白い満月
それとも
ちらちらと
舞いながら消えた
初恋のような あわ雪でしょうか

朝になりました
シクラメンの花びらが
ひとつ増えていることなど
だあれも知らない朝でした

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自由詩 かがり火が灯る冬の夜に Copyright そらの珊瑚 2012-01-10 10:55:41
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