モノローグ
石田とわ

        

        暖房のきいた薄闇のなかで
        ことさら物憂げにゆっくりと
        衣服を脱いでゆく

        (ここはそういう部屋だから)

        スカートをたくしあげ太腿でとまっている
        黒のタイツを脱ぎ捨てて
        それからようやく上着に手をかける

        (そうもっとゆっくり緩慢に)

        足の爪に塗られたペティギュアは
        血のように赤くなくてはならない

        (ひそかな抵抗の証)

        こんなおんなに何故なった
        
        堕ちてしまえばいい
        陽のひかりも笑顔も見られぬほどに
        堕ちてしまえばいいと
        そう思いながら

        おんなはやがて
        慣れていく
        すべてのものに

        夜は繰り返され、
        洗い落としたはずの残滓は
        少しずつ沁み込み

        おんなの爪を色濃くする

        それだけのことなのだろう
        
        血のような赤いペティギュアだけを身につけて
        笑みを浮かべ横たわる
        

        それだけのこと














自由詩 モノローグ Copyright 石田とわ 2012-01-09 00:03:21
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