年の始めの質問は
板谷みきょう

玄関のチャイムが鳴り出てみると
「宗教勧誘の二人連れ」が
冊子片手に立っていた

うわっ!
厄介なことに扉を開けてしまった
と思う間も無く
妙に愛想良い笑顔を浮かべながら

昨年の震災のことや
見通しのきかない将来の不安を
はきはき
ぽんぽん
神様のことも
熱心に話してくる

信仰の証の個人的実践が
他人の時間を奪うこと

信仰が強くなればなる程、
独善的で排他性が強くなること

それでも行動に駆り立てる
アナタの心にあるものは何か

そんなことを逆に尋ねてみたら
聖句を読み始めた
だからその一文に感動した
個人的な背景を聞かせて欲しい

笑顔を取り繕ってはいたが
明らかに不快感を抱いてるようだ

『永遠の命です。
興味がないのであれば、結構です。
今年一年、良い一年でありますように。』
そう言って
立ち去ろうとしたので
「いや、まだ話は済んでません。」と引き止めて
先ほどの質問に答えて欲しいとお願いした

すると
満面の作り笑顔で再び
教本を持ち出そうとしたので
「アナタの言葉で聞かせて欲しい。」
そう、お願いすると
浮かべていた満面の作り笑顔のまま
『コレはぁ
絶対の真理ですから。』と言った後で
『…では、また来ます。』と言ったのだ

全然、こちらの質問に答えてない

だから
そんなつもりでは無いことを
伝えたくて
つい
言ってしまったのだ

「もう、来なくて良いです。」と


自由詩 年の始めの質問は Copyright 板谷みきょう 2012-01-07 19:07:22
notebook Home 戻る