百年球根
そらの珊瑚

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春になっても
その球根は芽が出なかった
「おばあちゃん、これ、フリョーヒンだね」

知ってるよ
フリョーヒンは時々現れるんだ
僕が働いているチョコレート工場でも
定期的に現れるけど
検品係のフジタさんの鋭いチェックのもと
はじかれて
別のルートを行く
綺麗に飾られ
箱のなかには収めてはもらえない
素っ裸で
お徳用のビニール袋に
ひしめくように入れられて
そんでも
捨てられないだけ
ましかって
思ってる
フリョーヒン

「いいや、不良品なんかじゃないさ」
おばあちゃんは言う
それは
百年球根だって
ホントかな?
それじゃ、おばあちゃんも僕も
花が咲くのを見ることができないね

「おまえがいつか結婚して
子供が生まれたら
その子は見ることが出来るかもしれんよ」
百年球根は
究極の引きこもりだね

百年たったら
そんな話を覚えている人はいなくなる
そんでも球根は花を咲かせるだろう

いつか咲くその日のために

暗闇の中 じっとしている


自由詩 百年球根 Copyright そらの珊瑚 2012-01-07 10:23:43
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