石を隠しもちながら
石田とわ



              もがいてもがいて
              ひたすらに生きようとする
              死にたいと言い続けながら
              ほんとうはだれよりも生きたいんだ
              そのためのささやかな嘘を
              いったいだれが責められようか
              はやく死んでくれないかと
              石を投げつけられたときの苦しみを
              わたしも石を持つものたちも
              知り得ることはないだろう
              右手はきみの手を握りながら
              左手に石を隠しもっているのを
              きみは気づいているだろうか
              いっそうのこと死んでくれないかと
              願った夜を知らないだろう
              今年の冬はきつかった
              ほんとうにほんとうにきつかった
              その生きたぬくもりを感じながら
              一緒に歳をとろうじゃないか
              髪に白いものが混じり、しわができ
              だんだんと死がこわくなくなるまで
              右手をきみにあずけよう
              
                            





                         











自由詩 石を隠しもちながら Copyright 石田とわ 2012-01-06 18:45:09
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