ズー



その日記のタイトルは
タイトルなし。
彼はふざけていたし、
彼の日記は辿られる
ことを待っていたように
少しめくれている
空の東を飛んでいる
鳩の、羽ばたきが
止まって見える窓辺で、
ぼくたちは彼の日記を
お皿がわりにして
トーストを二枚のせる
その前で手を合わせても
彼のやることは
わからない、
実際わかろうとも
しなかったけど、
二枚のトーストにつける
ジャムの種類はわかって
いたように振る舞い
祈りのように
何度も眺めた、
いくつかのことばを
手元に置き、
いくつかを放り投げて
から、
窓を閉める
これも彼から教わった
ことなんだけど、
ぼくたちは手を合わせて
理解できないまま
トーストをかじって
タイトルのない日記の
一頁目から読み上げる
きょうから父
きのうから父
おとといから父
さきおとといから父
そんな調子のまま
日記は辿られつづけて
閉じられるまで
めくられる
窓の向こう空の東で
羽ばたきを止めたまま
鳩はまだトーストを
見ている


自由詩Copyright ズー 2012-01-04 10:58:03
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