リリックとして
竜門勇気


だいたい僕が書いてるものは何だろう
半分ほど埋まったノートを見て思う
やはり僕の中には無数の猿が叩くタイプライターが存在するのだろうか
薄暗い廊下に並んだ果敢な類人猿の挑戦を
選んで指先に伝えるナビのただの気まぐれにすぎないだろうか
薄暗く光るモニターに映し出される文字は
閉じた僕の内面で揺らめく不確実な結実を結んでいる
どうしてこんなことを続けているのだろう
安いカタルシスや焼け石に水の自尊心への給水?
当たるべき選択肢はどれだ
流れるテキストそのものだ

リリックとして 喋る言葉の合間、それに何が似てるのか
ヒトの、イシってやつなのか、それともそいつらと違うなにか?

自在に操るのは言葉ではなくキーボードで
誰にとっても変わらない価値を持った虚構だ
取った行動はすべて記録されるからと微動だにしない自分の未来は
数センチ開いた窓から注ぐたまの太陽のように冷えている
分かち合った痛みや喜びが今ただ過ぎた時間に起きた瞬きのように
脆く儚い期待の擬態だとしたらどうやって僕はそれを見分けようか
ただその思索のために埋まるノートが
忘却から救い出されている
気の滅入る記憶はシールされ固く封をされ
枯れて砂となるまでの時間を
傷んだ空気と共に過ごすんだ

リリックとして 喋る言葉の合間、それに誰が触るのか
ヒトの、イシってやつなのか、触るのは多分僕だ

リリックとして 選べる選択肢の間に、挟まって動かないなにか
ヒトの、イシってやつなのか?それを選ぼうとしていると気づく



自由詩 リリックとして Copyright 竜門勇気 2012-01-04 03:18:42
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