オケとヲケの物語り
……とある蛙

※古事記の中のシンデレラ(灰かぶり)物語 貴種流離譚
→グリムの中のシンデレラも結構残酷な復讐をしているようで似ています。

これは昔々のその昔
この国がとても若い頃
とても残虐な報復の果て
滅びてしまった王家の話

青い空を見上げて兄弟は
騙し討ちで殺された父に涙する
それでも生きて逃げるため
粮(かて)だけ持って逃げる旅

聞けば
父は従兄弟の大王に
騙しの狩りのその途中
突如 非情の矢で射殺(いころ)され
その後ザクザク切り裂かれ
熟した瓜のようにぐじゃぐじゃに
さらに謀反人と名指しされ
死体はちりぢりちぎられ
飼葉桶に捨てられて

彼ら二人は旅の空

涙流して山代(やましろ)苅羽井(かりはい)
二人で粮を食おうと腰掛ける
その時突然入れ墨男
猪飼の翁、大人が現れて
二人をどつきまわすは蹴り倒すは
年端もいかぬ兄弟は
哀れ食い物を奪われる
二人をなめきり間抜けな強盗
問われて自らの名乗りを上げる
  やましろの猪飼いじゃい


粮を奪われ腹空かせ
玖須婆の河を逃げ渡り
ようやく落ちた針間のシジム家
そこで卑しい牛飼馬飼
そのまま二人は逼塞し
それから幾年兄弟は
乞食のような粗末ななり
いくらもない粗末な糧食

ところが
シジム邸の新築祝い
二人は竈のそば
火炊き童子の灰かぶり
兄弟 祝いの舞を求められ
満座でまず兄が舞い
ついで 弟が詠(ながめごと)
それにあわせ舞を舞う

詠の最後に 素性の名乗り
そこへ居合わせ 針間の御言持ち
素性の名乗りを聞き分けて
都に報告、詞章を添えて
兄弟二人は召し出され
シラカの死後の大王空位
兄が固辞して大王空位
弟がやむを得ずつく大王位

直ちに兄弟の復讐酸鼻
山代の猪飼をひっ捕らえ
本人 飛鳥河原で斬殺はあたりまえ
その一族(うから)のことごとく
膝の筋を切断する

さらには父の敵の大王墓
復讐するため暴こうと
ところが、
どこから漏れたか讒言中止
その因果なのか人知れず
子も無くそのまま崩御した

兄が直ちに大王即位
その子悪逆非道と後ろ指
そのまま王家は娘だけ
何の因果か大王家
結局、そこで断絶し
他人(北国の人)ヲホドが婿入り即位


※兄弟の父は一七代履中天皇の子である市辺押磐皇子、一九代允恭天皇の子である二一代雄略天皇と従兄弟だが、雄略によって狩りに同行し殺害される。





自由詩 オケとヲケの物語り Copyright ……とある蛙 2012-01-03 20:46:45
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