す・うどん
たもつ




交差点で白いす・うどんに呪いをかけている
たくさんのうどん屋の店主
ただひたすらに紙を排出する事務機器の前
笑いすぎて釣り合いがとれなくなった僕の右と左側は
吸い込まれていく 具の無い麺汁の一番奥まったところ
輪転機で刷り込まれた自分の生命に似たものたち
刷り込んで刷り込まれて擦りむいてしまった
僕のまだ幼い脛のあたり
す・うどん もちもちとして 僕を侵食する


魚眼レンズで覗き込む明るい午後はそこはかとなく脱線
いたるところのステイションで僕は列車を乗り換える
食堂車のメニューは上から す・うどん す・うどん
朗読する声も晴れやかに朗らかに軽やかに透明な空気の振動
ってバカ 忘れろ 僕が僕であることを
僕を侵食する白いす・うどん す・うどん ですもの
トイレに引きこもったまま出てこない兄の名を順番に呼ぶ少女は
昨日 朝礼の最中に貧血で倒れました
それは蛇使い座の僕の妹


敵のいない兵士が宿営地で禁止されている笑い方をすると
瞬く間にニュースとなりうどん屋のメニューの隅々まで配信される
そんな街でいつまでもくっつかない
お腹と背中を抱えて僕は笑い続ける
その隣で笑い損なっている妹
青い空は膨張していると不謹慎な発想の途中
とてつもなく す・うどん
とほうもなく す・うどん
さよならを呟くとまた形成される底なしのす・うどん


何でもいいですから
具を入れてください







自由詩 す・うどん Copyright たもつ 2004-11-27 15:29:25
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