始まりの物語ー終わらない話
……とある蛙

年の終わりの最後の日

赤褐色の大地に立ち
遠く約束された地に行くことを阻む
北の山の連峰をのぞむ
彼の地の地平線を目指していたはずだが
あまりにも遠方にあることに気づき
今立ち竦んでいる。

終わりの無い話はあっても
始まりの無い物語は無い。
空を見れば混沌とした灰色が渦巻き
一面の褐色の荒野に立ち尽し
絶望の裂け目を垣間見ても
足元にはもう春の気配を感じた草が芽吹いている
土の色にはところどころ緑が交じり
そして、物語が始まる。

突然立ち止まった大地は
遠くヒマラヤ杉の森が霞み
そのさらに遠方
まるで傘のように北の連峰が覆い被さる
足元はゴツゴツした石ころの転がる赤土の土地だが

とぼとぼと歩む足取りの後ろに
あきらめて立ち止まる骸を狙って
灰色のハイエナが様子を伺い
上空には狡猾なハゲタカが獲物を狙って舞う
荒野に一滴の水源も無く
食べることのできる果実は何一つ実っていない
しかし、目の前には道があり、
その遥か彼方には目指す地平線がある。

年が明けて夜も明けて

地平線を目指すのだ
見えない希望であるかも知れないが
何一つ保証など無いかも知れないが
誰も付いてくる者は無く
独りぽっちで歩くしか無いのかもしれないが
しかし、地平線を目指すのだ
立ち止まって大地に食い殺されないよう
自分が自分であるために歩く



自由詩 始まりの物語ー終わらない話 Copyright ……とある蛙 2012-01-01 15:46:55
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