風の章
梅昆布茶
空から降ってくるものたちは
悲しみをたずさえてそっとやってくる
それはアリューシャン列島の凍った針葉樹を融かし
地に降り立つとそれぞれに色を変えて南下してくるのだ
柱時計をぼんと鳴らして津軽の雪を巻き上げ八甲田の氷雪となって降りしきる
初恋は初雪に似て淡い音色でいまだに心を揺らす
空から降ってきた悲しみは安達良山の狐の瞳に映る空なのだ
山巓を削る風は世界を彫琢して痛い
研ぎ澄まされたものはチリチリと響きをたてて大気に突き刺さる
祈りのうたが風にのってこの惑星を巡り
愛のうたは途切れとぎれに街をつなぎ
恋人たちは冷たい指を絡ませる
風の章を紐解く僕たちはまた自分も風であることを知る
嶺を駆け上り街を揺らしすべてを突き抜けて
あの空へかえるのだよ
あの悲しみへと