空白にする
りこ

ノートに身を投げましては
冬の景色になみだを浮かべる
あなたの口に添えた言葉を
死なせてしまった

息を止めて泳ぐ生活のなかで
このわたしに
はじめての名前がつきました

やわらかい部分に穴があいて
沁みこんでくる
あなたの背中に漂う温度を
感じてしまった

呼吸をする入り口が
不必要な心もち
ノートに積もるだけなら
心地よいくるしみだったのに

したためるには重すぎた
振り向いてしまうには早すぎた
それなのに
どうしてもあなただった
わたしの
打ち明け話を空白にする

それでも
わたしの行き届かない空気の中で
平然と呼吸をしているのが
ずいぶん憎い


自由詩 空白にする Copyright りこ 2011-12-30 00:39:20
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