『燃える琥珀』
あおい満月
琥珀という石を
手にしたことはないけれど
見つめたことがある
黄昏に凍りついた壁の向こうに
眠る葉や虫たち
幾度かこの地中から
出てくる日を待ちわびた
まるでいつかの
わたしに似ている
琥珀は一篇の詩のように
巡る時間を物語る
沈黙という
見えない声で
琥珀は眠らない
いつか手にする
主の指先や胸元で
静かに燃える
見つめられることによって
まだ生きていると
証明しながら
かつて生きていたものたちの墓は
眠らずに空を仰ぐ
手のなかで
ぬくもりを交わしながら
二〇一一年十二月二一日(水)