戒厳令の冬
木立 悟





灯から生まれる水が
夜の路を照らす
壊れるほどまぶしく
消し去るほどまぶしく


同じ速さで遠去かり
同じ間隔に並ぶ柱に
隠れては隠れては現われる
互いを互いに映し出す


しゃりしゃりと会話がはじまり
扉をはさみ 明けまでつづく
扉の隙間は
すべて 夜


犠牲によって
円は閉じる
はじかれたものは 野に目覚め
風と波と
光を吸う


どこまでも結びめから離れるもの
つらなりやつづきからは招かれないもの
一万本の色鉛筆で
何人のあなたを描けるだろう


夜は白く外に立ち
窓の生い立ちを読み上げた
隠した手のひら
虹の におい



かたちを失くしながら
見えなくなりながら
輪郭は燃える
言えなかった言葉を
言うために
すぐそばに在ることを
告げるために



銀や金や
永さに近い短さたち
肌を流れ
消えるやいなや
哀しい緑に居つづけるもの


冷たさも熱さも
まぶしさも痛みで
尖塔を撫で
空へ空へと
ガラスに昇る手を見つめていた
数え切れない色鉛筆を
ひとりきりのあなたを
見つめていた























自由詩 戒厳令の冬 Copyright 木立 悟 2011-12-25 21:28:52
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