ひとりじゃないクリスマス
はだいろ

クリスマスが三連休なんて、
いつもひとりだったぼくには、
どうでもよいカレンダーだったはずが、
今年は、
彼女が買ってくれたコートを着て、
どこかのイルミネーションを見にゆこう、
なんてことになった。

ところがぼくは、
油断したのか、のどが痛く、
コートを着ても急にさむけを感じて、
要するに、風邪を引いたらしい。

イブは、
朝から、彼女につきあって産科へゆく。
胎動がしないしないと、
心配でしょうがない顔をするので、
大丈夫だよと言ってはみても、
ぼくもつい不安だったのだけれど、
無愛想な担当医は、
タンポンをつっこんで、
はい問題なし、
ということだったので、
ひとまずホッとした。

新宿の南口へゆくと、
大きなショップ袋を両手に下げたカップルが、
たくさん歩いて、
何も買う予定はなかったけれど、
なんだかクリスマスに外を歩くなんて、
すてきなことにも思えてくる。
イルミネーションは、
南口にもちょっとしたのがあったので、
ふたりで歩いてみると、
行列があって、
カップルでツリーの下を通ると、
何色かにポカポカ光るしくみらしかった。
ぼくらのうしろのほうに、
おじさんがひとりで並んでいたけれど、
あれはあれで、
すてきだと思う事に、
ぼくはした。


高島屋のデパ地下で、
ローストビーフやらチキンやら、
サラダやパンや、
ケーキを買って帰った。
ふたりで食べて、
ケーキを食べる前に、
ぼくは風邪薬が効いてきて、
すっかり寝込んでしまったので、
彼女はひとりでさみしくケーキを食べたのだと、
なんか機嫌が悪くなっていた。


それで、
今日は朝から、
なんとなくその機嫌の悪さからか、
いちいちぼくの気に障るようなものの言い方をするので、
ぼくもいちいちがまんしてたのだけど、
とうとう、
あまりむかついたので、
ちょっと声を荒げたら、
もう帰ると言うから、
ぼくも着替えて、
地下鉄の乗り換え駅まで、送る事にした。


やっぱり、なりゆきの結婚だし、
三日もいっしょにいると、
いやなところがあぶりだされるものなのだろうか。
よくわからない。
もっと若くて、もっとやさしくて、
もっと性格のよい女なんて、
山ほどいるような気もするが、
そうゆう問題でもないのだとういうことは、
さすがにぼくもわかるようにはなったけれど。


朝、彼女がなかなか起きないから、
ジェイムスジョイスの小説を読んでいたのだけど、
今日はほんとうに、
ダブリンの小市民の悲しみがこころに染みた。
帰り際、
今日はお酒飲んじゃだめよ、
と言われたけれど、
もちろん、
ビールをもう飲んでいる。







自由詩 ひとりじゃないクリスマス Copyright はだいろ 2011-12-25 19:21:31
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