火事
草野春心



  ねえ、見て
  直方体が焼けているわ



  彼女は楽しそうにそう言い
  赤々と輝くオフィス・ビルを
  親指と小指に挟み
  水槽に
  落とす



  ぼじゅん、
  と落ちてきたそれに
  数匹のグッピーが驚いて身を避ける
  黒く焦げながらオフィス・ビルは
  敷き詰められた小石のうえに
  コツリと着地する



  彼女はそれを眺めながら
  人々の微かな叫喚が
  気泡を形作るのを待っている





自由詩 火事 Copyright 草野春心 2011-12-24 22:09:40
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