[雪やこんこ]
東雲 李葉

昔のことを思い出しました。

祖母の家の冷たい部屋の片隅で母のお古の絵本を読んでいました。
弟はまだいなかった頃のように思います。
大人たちの愛情は私にだけ注がれていたはずでしたが私はいつも一人ぼっちでした。
皆が集まる居間よりも背の高い箪笥が並んだ北向きの部屋が好きでした。
本当に北側だったのかは分かりませんが一日中薄暗かったのできっとそうでしょう。
すり切れたページには七色の鹿がいて、鹿はガラスの身体を揺らしてガラスの教会から駆け出します。
だけどその挿絵しか覚えていません。本の名前も結末も何にも思い出せないのです。


現在の私に触ってみました。

一人の家の冷たい部屋の片隅で母のお古の絵本を思い出している。
弟に聞いて分からないと言われた後です。
大人たちの愛情は今は誰に向いているのか聞く気も無ければ術も興味もありません。
皆が集まる居間には私の椅子は見当たらないので私は枕を北にして寝る。
本当に北側ですいつ死んだって面倒ありません。一日中薄暗い窓を見つめています。
すり切れたページには七色の鹿がいて、鹿はガラスの身体を揺らしてガラスの教会から駆け出します。
だけどその挿絵しか覚えていません。本の名前も結末も何にも思い出せないのです。


昔のことを思い出しました。

祖母の家の冷たい部屋の片隅で母のお古の絵本を読んでいました。
弟はまだいなかった頃のように思います。
大人たちの愛情は私にだけ注がれていたはずでしたが私はいつも一人ぼっちでした。


自由詩 [雪やこんこ] Copyright 東雲 李葉 2011-12-19 02:40:46
notebook Home