脳内の場所
木原東子


薔薇の棘に
誘われて秘密のところへ
行くのだ

死は疎ましいが
痛みはとくとくと滲む
何故だろう、胸もとどろく

恋も仕組みも知らない
しかし脳は準備していた
麻薬と混同と効果を

誘われ惹かれる痛みの中

しかし知ることになる日がくる
違う、痛いんじゃない

甘い椿の蜜

脳内のお隣りに
暴力のゾーンがある


初恋は全人的な陶酔にして
真心を捧げるもの
世にも不思議な魔力で
どこに導かれるのか
理解すら失う
すべての象徴としての
ひとりへの思慕

経血のリズムは余儀なく進む

月の満ちる夜
海に珊瑚の
受精卵が放たれる

密かに準備されていた
唯一の目標
身の内に海を
抱くまで


そのころに
快楽が特権を得て
初恋は終わる
手段のみが生き残り
目標と切り離された
混乱の元


Y「イヤダ
イヤじゃないけどイヤダ」


自由詩 脳内の場所 Copyright 木原東子 2011-12-16 18:50:38
notebook Home 戻る