ハッピーエンドののちのひとつ
木原東子

すべてが新品である
お互いの存在が目新しい
人の世の独立した若い単位として


姑が時には訪ねて来る
そこではもう、息子だった子はいないのだが
姑は新婚の部屋のなにかについて
なんらかの彼女の意見を言う

新妻にはその意見はいずれにしろ無用な批判だ


たいていは出産、という運びになり
喜びであり試練である子が授かる
姑が孫に夢中になる、なりふり構わずご機嫌をとり
幼児の一番のお気に入りになろうとする

若い母は押しのけられて途方にくれる


共稼ぎで子が一人か二人
嵐の日々である
姑が電話して来る
「どうしたの、電話もしてこないね」

妻であり母であり職業人であるうえに家の嫁


華燭の宴のあと、プリンスとプリンセスのキスの後
夢に描いた日々は泥にまみれる
お互いに強いられた交友から必然的に生じる
密かにのみ語られる日常の軋み


自由詩 ハッピーエンドののちのひとつ Copyright 木原東子 2011-11-26 23:18:56
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