日々の粒
木屋 亞万


もさもさのイチョウを見ると思い出すビッグバードよ君は元気か


ぼくはもうはちねんまえにしにましてそのままずっとしんだままです


さらさらの砂を瞳にかけられたように溢れる星満ちる夜


日が暮れる頭の中の空洞に響くドラムス走り出す歌


目の淵が震えていたら抱きしめてその体温を分けてください


この秋に心のどこが枯れたのかわからないまま木の幹を噛む


日常がつまらないわけではなくて日常にいるつまらない僕


「この柄がいいね」と君が言ったから八月二日はパンツ記念日


この胸がイイネ!と君が言ったから八月一日おっぱい記念日


停電の夜に僕らは止まらない朝焼けるまで闇に溶け合う


いつぞやの種が育ちいつのまにか種を落とすまたひとつ芽が出る


髪の毛がひとつ残らずユキヤナギそれが散るまで君は死なない


カチカチに凝り固まったかなしみをコトコト言葉の炎で煮込む


流れ出る涙は止めずに好きなだけ吐き出せばいい空になるまで


花髪の少女と空眼の男の子 夜に遊べる昼がみる夢


吹く風のやさしさで摘む花びらを眠れる鳥の元へ贈ろう


太陽は動いていない太陽を回したくって地球が回る


青空は誰の力も借りないで高い所で青々とする


八百長を許さぬ神は八百万ひとり相撲は比喩ではないと


ごろごろと腹が鳴るのを聞いたならおなかの中の猫はご機嫌


人間が植えた野菜を人間じゃないのが喰うと怒る人間


臆病な男は雪を知らぬまま温かくなる時を待ってる


「正月はどこか饂飩に似ている」と胡乱な奴がほざいてやがる



短歌 日々の粒 Copyright 木屋 亞万 2011-11-24 01:45:51
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
ミソひと文字