いってらっしゃい、いってきます
三奈


眠気眼のサラリーマンは
今日も大きなあくびをする
長いコートに包まれた
少し猫背なその背中

「いってらっしゃい」と声をかけたら
「いってきます」と言って
背筋をピンとのばした

あぁ、きっと今日もこの人は

満員電車に揺らり揺られて
目上の人には頭を下げ
弱音は心にしまったまま

一日を終えるのでしょう

自分が生きていく為に
家族が生きていく為に
ピンとのばしたその背中が
なんだか頼もしく見えました



眠気眼のOLも
いつも大きなあくびをする

「いってらっしゃい」と言われたから
「いってきます」と手を振った

街は今日も生きている
店の前を掃除する人
都心へ向かう車の渋滞
世界は今日も生きている

みんなみんな、「いってらっしゃい」
みんなみんな、「おつかれさま」

働き始めて分かったよ
生きてゆくって呼吸する事じゃないんだね
呼吸するにもお金がいるのね
やっとやっと気づけたよ

出かける前に深呼吸
今からは自分の力で呼吸していこう

そしたら、あの見慣れた猫背に
乗っかっている荷物も
少しは軽くなるかしら?






自由詩 いってらっしゃい、いってきます Copyright 三奈 2011-11-13 00:21:00
notebook Home 戻る  過去 未来